みんなで読む哲学入門

Ph.Dが講師の市民講座(上野ゼミ)

先生と雑談:秩序づけと収集

 こんにちは、事務局の白山羊ひつじです。先日、「みんなで読む哲学入門」2020年上半期(カント『永遠平和のため』、ヴォルテール『寛容論』、隠岐さや香先生対談企画)終了の振り返りと、後期に向けた上野先生との企画会議を終えました。合間の雑談に上半期の範囲にかかわる話題で先生とのやりとりがありましたので、記録しブログにて共有致します。

 

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白山羊

カントの『世界市民という観点からみた普遍史の理念』について「カントはすぐ体系にまとめたがるんだね」という話題から、百科全書派の「事典をつくって網羅しようとする」物の捉え方との比較という議論になったことがあります。

 

上野先生

カントが体系的にまとめたがるという点、百科全書派と比較されて大切な指摘だと思います。大きくいって、百科全書派や経験論者の一部には網羅性や収集家的特性が見える一方、ドイツは学としての基礎づけ・正当化や理論的に整理して秩序づける指向性は強いとは言えそうです。
その上で、教科書的にはカントは「批判」(理性に出来る事はどこまでかという意味での※白山羊註)、それに対してヘーゲルらは「体系」を重視したという違いがあると考えられています。その内実はいろいろと考えるべき論点ですが。

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なんでも体系になっていた方が学術的に優れているとぼんやり印象していましたが、体系以外にも物事を考える方法は色々あるのですね。先生の応答から、また知りたい事、知らないと気付いた事が増えました。専門家の先生に直接質問し、答えをもらう事で答え以上に理解が進むようです。

 

毎回の授業時間、あるいは授業時間後に、先生は質疑応答可の気軽な雑談時間を設けてくれています。せっかくの機会、ちょっとした疑問も大丈夫なので、読書会に参加された方はぜひ先生に質問してみて下さいね。

授業では、この記事の先生のコメントについての質問も受け付けています。

 

 

参加お申込みは下記です。

minnadeyomutetsugaku.peatix.com

 

(文責:上野ゼミ事務局 白山羊ひつじ)

2020年度 夏季ゼミナール『寛容論』(ヴォルテール)読書会(全3回)

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2020年度「少し長めの思想書を読む」

これまで当ゼミナールでは、 近現代ヨーロッパの政治哲学にかんする古典を輪読してきました。 2018年度にはユダヤ人問題や全体主義に近代的な啓蒙思想の隘路を見たアーレントの諸論考を読み進め、 2019年度にはそこから遡って啓蒙思想のさまざまな形態を、 イギリス・フランス・ ドイツの国境をまたいで旅するように眺めてきました。 これまでは体系的な大部の哲学書ではなく、 啓蒙思想のもう一つの姿であるエッセイ形式の簡潔な文章を一回完結で読んできましたが、 2020年度はもう少し長めのテクストを、 数回に分けて輪読していく形式で行います。候補文献は、

・ルソー『人間不平等起源論』
・カント『永遠平和のために』
ディドロ & ダランベール『百科全書』(序論および代表項目、岩波文庫
ヴォルテール『寛容論』
アダム・スミス道徳感情論』

等です。 このなかから一冊を選び時間をかけて読み進めていくことで、 現代世界のあり方や未来像について、 その思想的な基盤にまで遡って考えていくことができたらと思います。

 

上野大樹・記)
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講師の上記テーマ設定を元に、2020年7月〜9月はヴォルテール『寛容論』を3回に分けて輪読する事になりました。

課題図書:『寛容論』ヴォルテール中川信訳(中公文庫)

 

第1回 2020年7月29日(水)19時〜21時
 冒頭から第9章まで(中公文庫p9からp76まで)

第2回 2020年8月19日(水) 19時〜21時
 第10章から第14章まで(中公文庫p77からp124まで)

第3回 2020年9月9日(水) 19時〜21時
 第15章から最後まで(中公文庫p125からp188まで)

◎場所:オンライン会議アプリ「Zoom(ズーム)」 を使用したオンラインゼミナール
◎参加費:1,500円(学生1,000円)
*今回1回だけのご参加も可能ですが、継続講座ですので 全3回まとめてのチケット購入を推奨いたします。


講師紹介

上野大樹(うえの・ひろき) 1983年生まれ。
一橋大学社会学研究科研究員。思想史家。京都大学大学院人間・ 環境学研究科博士後期課程修了。京都大学博士。 日本学術振興会特別研究員DC、同特別研究員PD等を経て現職。 一橋大学立正大学慶應義塾大学にて非常勤講師。 最近の論文に、"Does Adam Smith's moral theory truly stand against Humean utilitarianism?" (KIT Scientific Publishing, 2020), "The French and English models of sociability in the Scottish Enlightenment" (forthcoming).

 

お申し込み

ptix.at


2018年度 ゼミナール

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ハンナ・アーレント(Hannah Arendt)

春期

KUNILABO人文学講座「アーレントからの政治哲学入門」アンコール企画
夜スク「ハンナ・アーレント入門〜共和国のはじまり〜」
2018年5月31日(木)第1回《リベラル・アーツとしての政治哲学》
2018年6月  7日(木)第2回《アーレントにおける共和国ルネサンス
2018年6月14日(木)第3回《アーレントケンブリッジ学派》
2018年6月21日(木)第4回《アーレントレオ・シュトラウス

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昨今の教養ブームや人文学への一定の関心の高まりには、小手先の技術論では現代社会が抱えている本質的問題に対応できないという意識が背景に見られます。政治を単なる事情通としてではなく、哲学的な視点から考えるために格好の素材として、本講座ではアーレントの諸著作をとりあげます。特に歴史的な視座を大事にしつつ、専門知とは異なる総合的な教養=リベラル・アーツとして政治哲学を学びましょう。
上野大樹・記)
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国分寺市のオーガニックカフェ「カフェスロー」の市民講座「夜スク」のプログラムのひとつとして、「KUNILABO」2017年9月期の人気講座「アーレントからの政治哲学入門」のアンコールが開催されました。
「専門家や地域の人々、 様々なバックグランドを持つ人々と、共に学び合う「大人の学び場」を作る。」をコンセプトとした「夜スク」では、全4回の講座終了後も、講座で喚起された参加者の学習への興味を応援してくださり、講師と参加者の集いの場を継続してくれることになりました。


秋期

2018年9月20日(木) 春期のおさらい勉強会
2018年11月15日(木) アーレントレオ・シュトラウスおさらい

秋期は、春期の復習をしながら難解なアーレントの思想をそれぞれ勉強することを通して哲学の学び方や、図書館の活用、哲学辞書や百科事典の使い方などを改めて教わりました。
アーレントの政治哲学にかんする新書や文庫なども複数紹介され、基礎知識が増え、初めての哲学ですが、自分なりの勉強の仕方もだんだんわかってきます。
次はいよいよ、アーレントの著書に挑戦。まずは軽いエッセイから入ってみることになりました。


冬期

2019年1月29日(火) アーレント「啓蒙とユダヤ人問題」を読む
2019年3月  7日(木) アーレント「独創的な同化」を読む

春から学んで来たアーレントの哲学について、ついにアーレント自身の文章を読みます。哲学辞書を引き、当時の時代背景を世界史レベルで復習しながら把握に努め、エッセイとはいえ読み慣れないと難解な哲学者の記述を読み解く試みを各自行いました。
また、20世紀のドイツでアーレントが抱いた国民国家への問題意識は、アーレントが古典と呼ばれる現代でも変わらない事が見えてきます。現代の問題に置き換えて議論を試みてみると、それを語り合うこと、答えを出す事がいかに難しいか、実感できました。

 

参考文献

アーレント

ハンナ・アーレント」 矢野久美子著 中公新書
今こそアーレントを読み直す」 仲正昌樹著 講談社現代新書
アーレント最後の言葉」 小森謙一郎著 講談社選書メチエ

 

政治哲学・思想

徳川時代の宗教」 R.N.ベラー著、池田昭訳  岩波文庫
 「近世」と独自分類される日本の江戸時代の文化状況を知るための本。

哲学・思想翻訳語事典」 柴田 隆行 論創社
 「幕末から現代まで194の翻訳語を「原語の意味」を確定したのち周辺諸科学を幅広く渉猟し大・中・小の項目で“読む事典”として解剖する。」(出版社WEBサイトより)

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福」 ユヴァル・ノア・ハラリ著  柴田裕之訳 河出書房新社
ベストセラー本。授業中に出た話題について先生から理論的な裏付けをする参考図書として紹介。「妖怪」という概念を生み出すのは人間だけ、という疑問にまつわる論考がある(はず)。

 

講師紹介

上野大樹(うえの・ひろき) 1983年生まれ。
一橋大学社会学研究科研究員。思想史家。京都大学大学院人間・ 環境学研究科博士後期課程修了。京都大学博士。 日本学術振興会特別研究員DC、同特別研究員PD等を経て現職。 一橋大学立正大学慶應義塾大学にて非常勤講師。 最近の論文に、"Does Adam Smith's moral theory truly stand against Humean utilitarianism?" (KIT Scientific Publishing, 2020), "The French and English models of sociability in the Scottish Enlightenment" (forthcoming).

 

2020年度春期 I.カント『永遠平和のために』 参考文献

 

◇カントの政治哲学概要


『カントの政治哲学入門 ─政治における理念とは何か─』(2018、白澤社) 網谷壮介

hakutakusha.hatenablog.com


当ゼミナール講師の共同研究仲間でもあり、講師のカントの政治哲学の解釈とも近いとのこと。
この本では、カントの法哲学上の主著である『法論』(『人倫の形而上学・第一部・法論の形而上学的定礎』1797)を取り上げて読解が行われています。「『法論』に触れなければ、カントの政治思想の全体像・体系性を理解したことにはならないだろう。カントはそこで、人間の自由を基礎として、どのような国家であれ目指さねばならない、理念的な方と政治のあり方を論じているのだ。」(本文10頁より引用)
難解なカントの著書、そのなかでもとりわけ難易度が高いといわれる晩年の大作『法論』が、明晰に読みやすい解説で記されています。(2020.5.25追加)

 


◇国際政治思想入門


『国際正義の論理』(2008、講談社現代新書) 押村高

www.amazon.co.jp

「国家の主権」と「人間の安全保障」の拮抗する時代に。カントの『永遠平和のために』で語られる国際的な国家間の関係から現代の国際政治を眺めると、また新しい発見がありそうです。(2020.5.25追加)

 

2020年度 春期ゼミナール『永遠平和のために』読書会(全4回)

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2020年度「少し長めの思想書を読む」

これまで当ゼミナールでは、 近現代ヨーロッパの政治哲学にかんする古典を輪読してきました。 2018年度にはユダヤ人問題や全体主義に近代的な啓蒙思想の隘路を見たアーレントの諸論考を読み進め、 2019年度にはそこから遡って啓蒙思想のさまざまな形態を、 イギリス・フランス・ ドイツの国境をまたいで旅するように眺めてきました。 これまでは体系的な大部の哲学書ではなく、 啓蒙思想のもう一つの姿であるエッセイ形式の簡潔な文章を一回完結で読んできましたが、 2020年度はもう少し長めのテクストを、 数回に分けて輪読していく形式で行います。候補文献は、

・ルソー『人間不平等起源論』
・カント『永遠平和のために』
ディドロ & ダランベール『百科全書』(序論および代表項目、岩波文庫
ヴォルテール『寛容論』
アダム・スミス道徳感情論』

等です。 このなかから一冊を選び時間をかけて読み進めていくことで、 現代世界のあり方や未来像について、 その思想的な基盤にまで遡って考えていくことができたらと思います。

 

上野大樹・記)
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講師の上記テーマ設定を元に、2020年4月〜7月はイマヌエル・カント『永遠平和のために』を4回に分けて輪読する事になりました。

 

第1回 4月16日(木)19時〜21時
 光文社古典新訳文庫 148~184頁、岩波文庫11~48頁

第2回 5月14日(木) 19時〜21時
 光文社古典新訳文庫 185~213頁、岩波文庫 49~79頁

第3回 6月1日(月) 19時〜21時
 光文社古典新訳文庫 214~253頁、岩波文庫 80~118頁

第4回 7月6日(月) 19時〜21時
 全体の振り返り


講師紹介

上野大樹(うえの・ひろき) 1983年生まれ。
一橋大学社会学研究科研究員。思想史家。京都大学大学院人間・ 環境学研究科博士後期課程修了。京都大学博士。 日本学術振興会特別研究員DC、同特別研究員PD等を経て現職。 一橋大学立正大学慶應義塾大学にて非常勤講師。 最近の論文に、"Does Adam Smith's moral theory truly stand against Humean utilitarianism?" (KIT Scientific Publishing, 2020), "The French and English models of sociability in the Scottish Enlightenment" (forthcoming).

 

お申し込み

minnadeyomutetsugaku.peatix.com

2020年6月のゼミ:カント『永遠平和のために』 #3

4月から7月まで春期4回に分けてカントの「永遠平和のために」を読みます。

第3回

◎日時:2020年6月1日(月) 19時〜21時
◎課題範囲:「付録」〜最後まで(光文社古典新訳文庫 214~253頁、岩波文庫 80~118頁)
◎場所:オンライン会議アプリ「Zoom(ズーム)」 を使用したオンラインゼミナール
◎参加費:1,500円(学生1,000円)/1回分
◎オンライン会議室ご招待状:チケットをご購入された方に、 事務局からご案内致します。
◎Peatixチケットキャンセル: チケット購入後はお支払い方法により返金手数料が発生します。 クレジットカード決済の場合、返金手数料はかかりません。


春期の今後の予定
◎第4回 7月6日(月) 19時〜21時
全体の振り返り

 

レジュメ

 

授業ノート

 

お申し込み

peatix.com

 

メモ

新型コロナウイルス感染症対策のため、春期はオンライン開催となりました。


2020年5月のゼミ:カント『永遠平和のために』 #2

4月から7月まで春期4回に分けてカントの「永遠平和のために」を読みます。

第2回

◎日時:2020年5月14日(木) 19時〜21時
◎課題範囲:第二章第二確定条項から第二補説まで
光文社古典新訳文庫 175~213頁、岩波文庫 39~79頁)
◎場所:オンライン会議アプリ「Zoom(ズーム)」 を使用したオンラインゼミナール
◎参加費:1,500円(学生1,000円)/1回分
◎オンライン会議室ご招待状:チケットをご購入された方に、 事務局からご案内致します。
◎Peatixチケットキャンセル: チケット購入後はお支払い方法により返金手数料が発生します。 クレジットカード決済の場合、返金手数料はかかりません。


春期の今後の予定

◎第3回 6月1日(月) 19時〜21時
光文社古典新訳文庫 214~253頁、岩波文庫 80~118頁

◎第4回 7月6日(月) 19時〜21時
全体の振り返り

 

レジュメ

 

授業ノート

 

お申し込み

minnadeyomutetsugaku.peatix.com

 

メモ

新型コロナウイルス感染症対策のため、春期はオンライン開催となりました。